1月24日


今日、1月24日は笹井宏之さんの命日だそうだ。さっきツイッターで知った。

笹井さんは歌人である。
歌人というのは、短歌を詠む人のこと。


私はまだ短歌の浅瀬を歩いているところで、歌人との出会いの数も少ない。
好きだと胸を張って言える歌人もいない。
しかし唯一、笹井さんの短歌は好きだなあとなんとなく思っている。(詳しいわけじゃないから、小声でしか言えないけど…)


笹井さんの短歌は自分のこころの世界とどこか似た匂いがする(ような気がする)。
ささいひろゆき、という名前の響きもいい。
かろやかで、やさしい。


今の私と同じ歳の時に亡くなったらしい。


この森で軍手を売って暮らしたい まちがえて図書館を建てたい
「はなびら」と点字をなぞる ああ、これは桜の可能性が大きい
ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす
半袖のシャツ 夏 オペラグラスからみえるすべてのものに拍手を
蜂蜜のうごきの鈍ささへ冬のよろこびとして眺めてをりぬ
一様に屈折をする声、言葉、ひかり わたしはゆめをみるみず
鞄からこぼれては咲いてゆくものに枯れないおまじないを今日も
やむをえず私は春の質問としてみずうみへ素足をひたす
そのゆびが火であることに気づかずに世界をひとつ失くしましたね
あめいろの空をはがれてゆく雲にかすかに匂うセロファンテープ
清いものになりたいといういっしんでピアニカを吹き野菜を食べる
内臓のひとつが桃であることのかなしみ抱いて一夜を明かす
おくゆきがほしいときには煙突をイメージしたらいいんじゃないの
雪であることをわすれているようなゆきだるまからもらうてぶくろ
冬空のたったひとりの理解者として雨傘をたたむ老人
ほんのすこし命をおわけいたします 月夜の底の紙ふうせんへ
ひかりふる音楽室でシンバルを磨いて眠る一寸法師
戦争が優しい雨に変わったらあなたのそばで爪を切りたい
コンビニのどこかで雨が降っている 音楽を消してもらえますか
わたしだけ道行くひとになれなくてポストのわきでくちをあけてる
われはつねけものであれば全身に炎のやうに雨は匂へり
白砂をひかりのような舟がゆき なんてしずかな私だろうか
あこがれがあまりに遠くある夜は風の浅瀬につばさをたたむ
祝祭のしずかなおわり ひとはみな脆いうつわであるということ
ー笹井宏之『えーえんとくちから』より抜粋




私が唯一もっている笹井さんの歌集。
ぱらぱらとめくって気になったものを読むということばかりしてきて、今日はじめて全部通して読んだ。


前言撤回する。
わたしは笹井宏之の短歌がとてつもなく好きだ!!胸を張って叫ぶよ!!!!



手の中の秘密基地

優希

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